松浦亜弥という人

先日ニッポン放送からハロプロ枠がなくなるんだろうかとか書いたけれど、来期から水曜日のオールナイトニッポンのパーソナリティに松浦亜弥が決まったという情報があった。
 
それを知って思ったことは「びっくり」と「やっぱり」と「がっかり」だ。
 
無くしてしまったと思っていたハロプロ枠が継続したという事に「びっくり」。そのこと自体はもちろんハロプロにとって喜ばしいことだと思う。だけれど、それがモーニング娘。のメンバー以外の人に受け継がれてしまったということがすごく無念なのだ。
 
今までみたいに娘。の裏情報が聞けなくなるのも残念なことだ。だがそれよりも、矢口さんから他の娘。メンへ、ではなく松浦さんが選ばれたということ。その事が現状ではヲタ以外の一般層を取り込む力がもう娘。にはないと、今のハロプロには松浦さんにしかその力が無いんだと認識されていることの証明となってしまった気がしてすごく残念だ。
 
それからもう一つ、「がっかり」の理由には、今まであまり松浦さんのラジオに面白みを感じたことがないということもある。彼女のヲタで無い上に、聞いたことがあるのが「Let's do it!!」の数回だけということもあるので、決め付けるのは早計なのかもしれないけれど、ハロプロのラジオ枠で一番大きな所を彼女にまかせても大丈夫なのか?彼女にそれをこなせる力があるのか?と心配になってしまうのだ。
 
とにかく、松浦さんにはハロプロの代表として、ヲタ以外の一般層をもガンガン釣り上げて取り込んでしまう様な、面白い番組を作って欲しいなと思う。
 
 
そんな中、松浦さんのシングルV 「ずっと 好きでいいですか」 [DVD]を初めて見たので、以下感想文。
 
まずは本編。
つまんねー。……ごめんなさい。いやでもね、カメラがずっと固定で、松浦さんがずっとアップで、左見たりこっち見たりしながら歌ってるだけ。ちっとも面白くない。
 
もちろん、松浦さんヲタにはたまらない映像なんだと思う。もしこれがよっちぃだったら多分狂喜乱舞してるもん。遠くを見つめる目。憂いのある表情。こちらをしっかりと見つめてくるまなざし。松浦さん大好きな人にはたまらないだろう。でも、彼女に興味のない人には退屈なだけだと思う。
 
だからついつい「鑑賞」じゃなくて「観察」になってしまう。それにしても松浦さん、やっぱ大人びてきてるね。と。老けたという言い方もできるんだけど、それが松浦さんにとってはプラスに働いてる気がする。アイドルサイボーグという言い方をされていたけれど、見た目に年齢という「経験値」みたいなものが加算されたことによっていい意味での「人間臭さ」がかもし出されてきている気がする。
 
それに加えて「アイドル」の域もうまく脱してる印象。曲調や服装、髪型なんかのせいもあるだろうけど。何も知らない人がこのPVだけ見たら、彼女をアイドルと評することはないと思う。熱愛報道は実は彼女をアイドルから方向転換させるための事務所の策略だなんて憶測があるけれど、それもあながちデマではないんじゃないかと思ってしまう。ほんとにアイドルから女優へと一歩前へ進めさせるつもりがあるなら、上手くイメージを作ったもんだと思った。
 
 
うって変わってAnother Edition。
こっちはすごく面白い。なんでこっちがAnotherなんだか。マンパワーの時も同じ事を思ったけれど、あっちは火を囲んでグルグル回るシーンが宗教色が強いからAnotherになったとかいう話を聞いた。こっちは何故Anotherなんだろう。こっちのがずっと良く出来てるのに。
 
 
デジタル式のカチンコのアップから始まる。それが引っ込むと「白い枠」があって、その向こう側に立つ「松浦亜弥」。後ろには桜の「セット」。そこがスタジオの中らしいことがわかる。
 
松浦亜弥をめがけてズームアップしてゆくカメラ。
白い枠の中にフレームイン。
途端に彼女のいる「向こう側」が「こちら側」となる。
 
松浦亜弥の世界。歌い踊る彼女。
 
だが数秒ですぐに白い枠の外までズームアウトするカメラ。世界は再び「向こう側」と「こちら側」に別れる。その場を離れてスタジオの中を浮遊し始めるカメラ。再び白い枠を捉え、その中の景色を捉え、そこに立つ松浦亜弥へと迫ってゆく。
 
こんな感じで、スタジオの中にいくつもの「作られた世界」があって、カメラがスタジオ内を浮遊して白い枠を捉え、松浦亜弥のいる世界を捉えては、再び離れ、浮遊する。その繰り返し。だがそれが面白い。こちら側と向こう側が重なる瞬間にドキドキする。
  
美しく演出された松浦亜弥の世界と、実はそれらの世界が組み立てられているスタジオ内というリアルの世界。二つをせわしなく行き来するカメラの視点に、見ている側は美しい世界だけにただ浸ることを許されない。すぐにそれは紛い物だと思い知らされ、衝撃を受ける間もなく次の美しき世界を与えられる。その繰り返しによって「作られた世界」の儚さが際立ち、その世界に存在する「松浦亜弥」にますます惹き付けられる理由となる。
 
大きく捉えればこれは「テレビの向こう側」にいるアイドルたちとそれを見ている自分たち、の構図を抽象的に表しているのかもしれない。とか思ったり。作った人はそこまで考えてないかもしれないけど。
 
松浦亜弥という人にも「向こう側」の存在にふさわしい作り物っぽさがある。それを上手く生かしているなと思った。とここまで考えて気がついたけれど、これじゃ曲のテーマとか全然関係ないよね。だからAnotherなのかな。
 
 
とにかく、このAnother Editionは何度も繰り返して見たくなるような一作。すばらしい出来だと思う。これだけで松浦さんヲタじゃない人でも、見てみる価値はあるのではないかなと。メイキングはまあ、松浦さんらしいといったところ。パンの問題はわからなかった。
 
 
 
ついでに曲の方「ずっと好きでいいですか」の感想文。
 
音楽のことに詳しくないから、どうしても詞の内容に好き嫌いが左右されてしまうのだけれど、この詞のテーマは難しい。どの視点に立つかによって感じることが違ってくるからだ。永遠に想われるという相手の立場からすればこれはたぶん「純愛」の曲だけれど、これからできる恋人の立場からしたら「不誠実さ」を感じてしまうのではないだろうか。これ程の熱をもって語られる彼女の言葉に「若い頃はそんなこともあるよね」なんて理解を示せるほど自分は大人でもない。
 
また、歌う彼女の立場もよくわからなくて困る。これって結局別れの曲なんだろうか。今の恋人とはやっていけないけど「永遠に好きでいる」ってこと?想いの深さはなんとなくわかるし、すごいと思うけど、彼女のポジションが明確じゃないからいまいち共感しにくい。考えるな、感じろ!ってことかなあ。自分の読解力が足りないだけかも知らんけど。
 
曲調は好きだ。ピアノがいい感じ。
 
c/wは曲も詞も好きだ。松浦さんもがんばって歌ってると思う。でもなんだかしっくりこないのは、個人的に彼女にこういう歌を歌うイメージを見出せないからだと思う。だからなんとなく拙さとか演技臭さを感じてしまう。曲の内容にあった深味というものが出てない気がする。「がんばって」歌っている印象を受ける。決して下手ではない。ライブで聞いたら違う印象かもしれない。