・ピエロとピエレットの唐草模様

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飼育草板 「娘。祭り」スレ 147-166

大好きな吉澤とのデートに気合を入れて臨んだ小川麻琴。
ところが喫茶店で吉澤は突然「卒業」について話し出す。

とりあえずよしまこ。でもテーマは娘。における自分の役割について。
吉澤さんを普段の姿からだけで判断してはいけないのです。そんな話。
とにかく吉澤さん大好きなマコと、マコから見た吉澤さんの本当の姿。
 
短編集の中の一作。このスレには短編でありながら実に内容の深い作品が数多い。読んではうならせられるものばかり。恋愛もの、シリアスなものから、なんだこりゃ?な作品まで、ジャンルは幅広い。しかもそれを全部さゆが書いてるっていうんだからあなた。読むしかないってもんですよ。後藤とさゆ、紺野と松浦、ミキティとれいなの「胸」、暴走する子供たち。そんなのがお好きな方もぜひどうぞ。
 
そんな感じで以下娘。ドキュの討論会にも触れた感想文。ネタバレ注意。
 
 
 
 
 
娘。ドキュメントでは5,6期がこれからのあり方について討論らしきものをしていたが、結局は「各個人がレベルアップする」という結論にしか達していないようだ。たしかにそれも大切なことだろう。だが個人的にはそれを不満に、なんとなく物足りないように感じた。それは何故かと言うと「それじゃモーニング娘。という団体としてはどうあるべきか」にほとんど誰も触れなかったからだ。
 
個人がレベルアップすればそれでいいというだけなら、娘。はただアイドルを集めた「枠」でしかないということになってしまう。モーニング娘。という一つのグループの一員として、「モーニング娘。を進化」させていくにはどうしたらいいのかを考えるという意識が、あの討論会からはあまり感じられなかった。進化せねばという意識があってもそれが自分にだけしか向いていないのならば、いつしか「枠」そのものの崩壊につながってしまうのではないかと不安に思うのだ。
 
きっと、彼女たちにも「モーニング娘。の一員として」の問題意識や向上心はあるのだろうとは思う。それが表に見えないだけで。或いは見せようとしないだけで。そう信じたい。
 
 
そしてこの作品は、そんなモーニング娘の一員として吉澤さんが務めてきた「役割」がテーマ。
吉澤ひとみの娘。内でのイメージといえば、お笑い担当とか、ムードメーカーとか、男前とかそんなところだろう。いわゆる「道化」役。だがそれが実は意識して作られて来た姿だったとしたら。
 
よっちぃがこんな風に意識して道化をやっているという設定はそれほど珍しくはない。表ではおちゃらけてるけど実は繊細で傷つきやすい性格の人なんだという描き方はけっこうある。だがそれを「役職」にまで昇華させたのは初めて見た気がする。その点でまず「おっ」と思った。
 
しかもその役職をかの圭ちゃんから引き継いでいたとなれば。道化とは、計算して笑いをとって場をなごませ、裏では人以上の努力をして尚且つ人知れず娘。を支えてゆく、そんな役割。それが圭ちゃんからよっちぃに引き継がれたということに、なるほどそうだったのか、と納得させられてしまう。保田圭という人ならでは、吉澤ひとみという人ならではのイメージを上手く使っていると思う。
 
そしてよっちぃのあのあほっぽい言動も、たまに本気で大丈夫か?と心配したくなってしまうくらいにあほっぽい言動も「全て計算済みなのさ」と言われてしまったら。本当の姿は頭が切れて、努力をするけど表には見せなくて、自分を犠牲にしてまで娘。を支えている人なんですよと言われてしまったら。もう吉ヲタとしては嬉しい限り。理想のよっちぃの姿がそこにはあるわけで。
 
吉澤さんリスペクトなマコからの視点は、そんな吉ヲタ視点にも重なる部分があるかもしれない。とは言え小川麻琴という人間は半分天然が入っていたりするキャラ。その半分の「天然」からかもし出される何とも言えないおかしみが、この作品をただ深刻で切ないだけの話に終わらせていない。しかもマコの残り半分ではしっかりと計算できる部分があって、それがマコ自身の完全に道化にはなりきれない哀しみや破れた恋心の切なさをより一層深く演出してもいる。
 
ラストの雨に打たれながら笑い踊るシーン。次の役目ををマコに託すよっちぃ。よっちぃの本当の強さと哀しみを知り、決意するマコ。流れる涙。それらを全て包み込んで流す雨。笑顔で踊り続ける二人。まさに道化の「表の笑顔と裏の涙」を象徴するかのような場面。すごいと思った。
 
 
読者からついた感想の中に「笑っていいのか泣いていいのかわからない」というものがあったが、自分もまさにそんな気分だった。そんなレスについた作者さんの言葉は「笑ってやってくださいな」という一言。これこそこの作品のテーマと作者さんの懐の深さを表している言葉だと思う。
 
 
このスレでは今でも短編が書かれ続けている。他にも秀逸なものが多い。特につんく♂氏主演の「廃品回収」のラストには衝撃を受けた。うまい!と思った。二人の後藤さんをめぐるさゆの物語も素晴しい。なんでこの人こんなにすごいもの色々書けるんだろう。これからも見守っていきたいスレ。
草板で容量が少ないからすぐにいっぱいになっちゃいそうだけど、できれば終わってからもさらに続けて書いて欲しいなと思う。